仙台市立寺岡中学校様【農業講義&田植え体験】実施レポート

■農業講義&田植え体験
■実施概要
【日時】2022年5月10日 10:00~15:00
【団体】仙台市立寺岡中学校様
【人数】137名

普段食べているお米や野菜。
身近に田んぼや畑がなければ、どのように作られているのかと想像してみたり、興味を持ったりする機会は少ないのかもしれません。
今回は、農家の仕事やお米の育て方について学ぶ「農業講義」を受講した後、実際に田んぼに入って「田植え体験」をしていただきました。

講師は農家の阿部勝善さんです。
南三陸町の入谷地区で有機農法による米作りと野菜作りを行なっています。
阿部さんは自身の職業を「楽農家(らくのうか)」だと言います。

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「今年はとうもろこしを1万本植えようと思っているんですよ。じゃがいもは数えてみたら12種類くらい植えたかな。他にもいろんなものを育てるの。趣味みたいなものだから苦にならない!楽しいんだよね!」
元気ではつらつとした阿部さん。参加した生徒からは、とうもろこし1万本という言葉に驚きの声があがっていました。

自己紹介の後は、お米の育て方についての講義です。
お米は種まきから収穫まで7ヶ月ほどかかります。種まき前の様子や発芽した芽の様子、育苗器や種まき機の写真を見せながら、阿部さんはお米の育て方を説明していきます。

「種をまいてから3日くらいすると発芽します。ビニールハウスに苗を並べて置くんですが、急に太陽の光が当たると、苗がびっくりするんですよ。だから、不織布を上にかけてあげて、日光が優しく当たるようにしています。大体20〜30日くらいは、ビニールハウスで育てます」

阿部さんのお話から、大切な赤ちゃんを育てるように苗を扱っている様子が窺えました。
生徒さんは、農家の方が丁寧に作物を育てていることに対し、頷いたり真剣にメモをとったりしながら話を聞いています。

「田植えをした後の水の管理が大事なんです。水の管理を怠ると雑草が生えてきて、稲に養分が行かなくなってしまいます。しかも、雑草に虫がついて、その虫がお米を食べてしまうんです。だから、土手の草刈りもしなくちゃいけないんだけど、真夏の草刈りが一番重労働かな」

今まで、農業の楽しさについて笑顔で話していた阿部さん。
しかし、近年、農家は厳しい状況にあると言います。
コロナウイルスの感染拡大による、飲食店の営業時間短縮等の影響で、お米の需要が下がり、売値が下がってしまったそうです。
さらに、ロシアのウクライナ侵攻により、農産物を育てるのに必要な肥料が輸出規制され、価格が高騰しているのだとか。

「30キロのお米が約6〜7000円くらいで売れていたのに、今は約4600円になってしまったんです。肥料は高くなっているのに、前よりも安くしか売れないものだから、なかなか黒字にならない」

生徒さんは、農家さんの生の声を聞くことで、農業で生計を立てていくことの大変さを知ったようです。

講義が終わった後、農業について楽しそうに語る阿部さんに触発されて、興味が湧いたのか、自ら手を挙げて質問している様子がたくさん見られました。

農業講義の後は入谷地区の田んぼへ移動して、田植え体験です。

今回、田植えをするお米の品種はササニシキです。
ササニシキは昭和50年代前半までは、宮城県の主力米でした。
しかし、昭和55年の大冷害で、宮城県のササニシキは大凶作に見舞われました。このことをきっかけに、より冷害や病気に強い品種が求められるようになり、冷害に強い新品種ひとめぼれが生まれ、宮城県の主力米はひとめぼれに変わりました。
今では、南三陸町で育てているお米のほとんどがひとめぼれで、町内でもササニシキは貴重だそうです。

「ササニシキを育てられたら、米農家として一人前」と言われるほど、農家の腕が試されるお米でもあります。
コシヒカリに比べて粘りが少なく、すっきりとした上品な味わいが特徴のササニシキは、和食割烹や高級寿司店で好んで使用されるそうです。

今回は阿部さんの田んぼ3枚に田植えをします。
阿部さんの農業仲間もいらっしゃり、田植えのやり方を教えてもらいました。

「大体3〜4本くらいの苗をとって、人差し指の第一関節まで穴を開けたところに植えてください。そのままだと苗が浮いちゃうので、指の跡を埋めていってください。田んぼの中に線を引いておいたので、その線に合わせてまっすぐ植えていきましょう!大体15cmの等間隔に植えていくようにね〜!」


 

 

説明の後、靴を脱いで、靴下の状態で田んぼに入ります。

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「ぎゃー!!ぐちょっとした!」
「足が動かない!転びそうー!」

「わ!虫がいる!カエルもいる!」

田んぼに入った生徒から、次々と絶叫が聞こえてきます。
土を踏んだ時の感触や歩きにくさは、みなさん初めての体験のようです。
田んぼに慣れてきたら、いよいよ田植えスタート。

初めは、これでいいのかな?こんな感じ?と不安そうに植えていきます。前に進もうと足をあげようとしても思うように動けず、転びそうになります。
 

場所によっては、足が深く沈むところがあるので、慎重に進みながら、丁寧に苗を植えていきます。
日差しが照りつける中、みんなで協力して、3枚の田んぼに田植えをすることができました。
泥だらけになった手や足は、近くの川で洗い流し、自然を堪能する姿が多く見られました。

 

参加した生徒からは、

「足に力を入れると足がとられるし、深いところもあって、田んぼの中を歩くのが思ったよりも大変だった。今は機械で田植えできると聞いて、農業の進化を感じた」
「真っ直ぐ等間隔に植えて行くのが難しかった。全部植え終わって見てみたら、まっすぐ植えていたはずなのに意外と曲がっていて驚いた。手や足は汚れるし、大変な作業だったけど楽しかった」

「お米ってこうやって育てられるんだって実感した。ちゃんと育ってくれたら嬉しい。最後に川で足を洗うのも気持ちよかった」

と感想をいただきました。

引率した先生からは
「第一次産業や農業については授業でも学んでいるが、阿部さんの農業講義でより詳しく学べた。生徒たちも自ら質問をしていたので、もっと知りたいという気持ちが高まったのだと思う」
「生徒がもくもくと作業している様子が見られた。田んぼとは縁がない生徒がほとんどなので、貴重な体験をさせていただいた。今回田植えした田んぼの様子を阿部さんが­Facebookで発信してくれるので、生徒達にも育っている過程を共有していきたい」
と感想をいただきました。

最後に阿部さんは、

「今日は風が少なく日差しが出ていて、田植え日和でした。今回の体験で、農業ってこんなに楽しいんだって思ってもらって、農業をやりたいって夢を持つ若い世代が1人でも増えてくれたら嬉しい」
と参加者の皆さんを笑顔で労いました。

今回、田植えをしてもらったお米は、秋頃に収穫し、学校に送られるそうです。自分達が植えたお米を実際に食べることで、日々の食卓に出てくる食材をどういう人たちがどんな思いで、どんな環境で作ったのか、考えるきっかけになるのではないでしょうか。
そして、阿部さんがおっしゃったように、生徒のみなさんが農業を身近に感じ、将来の選択肢が広がるきっかけになれば幸いです。

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