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生きるまち。

26.農はだて

南三陸町入谷の山間では、「農はだて」という新年の作柄を占う正月行事が伝えられている。「はだて」というのは、入谷の方言で「はじめ」という意味。「農はだて」は農家の仕事始めの日だ。
 
その準備は、暮れの28日から始まる。正月のもちをついたこの日、丸く伸ばしたつきたてのもちを3つ、一升枡に入った米の上に置く。その枡を土間に置いて、洗った臼をさかさまにしてかぶせ、新年を迎える。
 
元旦、新調したひしゃくで「若水」を汲む。新年最初に汲んだその水を新品のバケツに人れ、さかさまにした臼の上にお供えする。

1月11日が、農家の仕事始めの日となる。早朝、まだ暗いうちに家族揃って起床すると、土間にむしろを敷き、その上で縄ないをする。
わら縄は、炭を束ねたり、草履やむしろなどの生活用具にするための、農家の基本の材料だ。

ひと仕事終えると、土間にお供えしていた臼の上から若水が下ろされ、さかさまだった臼がもとに戻される。
約2週間もの間封印されてきた一升枡ともちが再び光を浴びる。

家族はまず3つのもちのうち、1つ目のもちを裏返す。つきたてだったもちの裏側には、一升枡の米粒がついている。もちに米粒がたくさんついていたら、新年は豊作である。1つ目のもちはワセ(早めに収穫される稲)を占い、2つ目のもちはナカデ(標準の時期に収穫される稲)を占い、3つ目のもちはオク(遅い時期に収穫される稲)を占う。

この朝は、そのもちを焼き、小豆粥の中に人れ、「朝流し」と呼ぶ食事をする。
 
暗いうちから起きて、ひとときも無駄にせず「農はだて」が行われるのにはわけがある。農作業が1日遅れれば、夏の農繁期に大きな仕事の遅れを出すことになる。時期を逃せば収穫が減る。決して、遅れてはならない農作業のきびしさを、代々伝えるための行事でもあるのだ。

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